会長挨拶
第39回日本Shock学会学術集会を、2025年5月23日(金)、24日(土)にグランドヒル市ヶ谷で開催させて頂くことになりました。歴史と伝統のある本学会の会長を拝命し、大変光栄であると共に身の引き締まる思いです。
本学会は,専門性の枠を超えて救急や集中治療、麻酔科、外科等の医師や研究者が集う学会で、敗血症性ショックや出血性ショック等のショック病態や多臓器不全、外傷、熱傷、循環不全などに関して最新の基礎的、臨床的研究成果を議論する場として発展してきました。これからの日本は不安定な国際情勢に加えて大地震など大規模自然災害の脅威にも対処せねばならず、まさにこれまでの日本が誇る数々のショック研究の真価が問われる時代を迎えようとしています。本学会は基礎医学と臨床医学のシームレスな融合が最大の特長だと考えますが、基礎から臨床へ、理論から実践へと、これから来るであろう激動の時代をナビゲートできるようなショック研究に関する発表や討論を期待しております。
特別講演では、広く安全保障にかかわる第一級の専門家にして本邦の外傷外科の権威である松本尚先生(前防衛大臣政務官、現外務大臣政務官)に「東アジアの安全保障と戦傷医療」の御講演をお願い致しました。金曜日のイブニングセミナーでは最近、臨床で魅力的なデータが出つつある「敗血症に対する顆粒球吸着療法」の御講演を、土曜日の教育セミナーでは、敗血症や熱中症でのバイオマーカーの臨床に直結する最新知見の御講演や、今後、ショック・集中治療で鍵となって来る腸内細菌の制御に関する御講演を、各分野の第一人者の先生方にお願いしています。
シンポジウムでは現在、侵襲学分野で最も注目されている「PICS, PIICS病態と治療」、防衛省が全血輸血の検討を始めたことでも注目されている「外傷性大量出血と凝固障害の制御」の2つをテーマとし、パネルディスカッションでは、必ずや近い将来、核心的な治療ターゲットとなるであろう「腸内細菌とシンバイオティクス」を取り上げました。各演者とも新進気鋭の先生方ですので、活発な御討論をお願いします。なお、発表枠に限りがあり、必ずしも全演題を採択できませんでしたことを心よりお詫び申し上げます。
本学会の特長である会長賞選考セッションにも多くの演題を頂きました。本セッションはショック研究の若手の登竜門で、ここから世界に向けて飛躍されることを期待しています。今回の会長賞受賞者は2026年ラスベガスでの米国ショック学会(国際ショック学会と同時開催)で発表頂く予定です。
また、本学会活性化の原動力である一般演題でも、基礎研究、臨床研究、症例研究の3つを組ませて頂きました。基礎研究、臨床研究ではシンポジウムでの発表がふさわしいような重厚な発表が数多くございます。症例研究は、いずれも今後のショック研究に資するような価値ある御発表で、ここから新しい研究テーマが花開くことを期待しております。
梅雨入り前の爽やかな週末に、アカデミックなひと時を市ヶ谷でお過ごし頂ければ幸甚です。
|